今回は鈴鹿川源流域で魚の生態…ではなくて「鈴鹿川源流域の魚が大好きなひと」を調査しましたよ!
峯和也さん
魚と子どものネットワーク(2008年設立)代表
亀山市里山公園みちくさ管理運営協議会会長
源流協議会の役員さんでもあります。落ち着いた年配の方…をイメージされませんか?
いえいえ、たも網の似合う魚とり少年をそのまま大人にしたような方です。携わっているお仕事も愛知県の農業用水に関することで、お仕事の延長上で水源である長野の山林で森づくり活動をすることもあるそうです。亀山育ちの峯さんにとっての亀山の川、魚について魅力を語っていただきました。
インタビュアー:源流協議会事務局
インタビュアー
子どものころはどんな感じでしたか?
峯さん
現在「魚と子どものネットワーク」のもう一人の代表で、ぼくより2歳上の新玉さんにくっついて行って近所の川でいつも遊んでました。川に入ること、生き物がとれること、自体が楽しかったんだと思います。隠れている魚を見つけて、逃げる魚を追いかけて、魚が取れた!というワクワク感。
インタビュアー
魚が好き!一筋なんでしょうか?テレビゲームをしたりカード集めしたりもしたんです?
峯さん
しましたしました。でも、中学生になってもクラブ行く前に自転車で石水渓まで走って行ってどぼん、クラブ終わったらまた石水渓に走ってどぼん!と飛び込んでました。
最初は魚がとれるだけでうれしいけど、知識が増えてくると「珍しい」「きれい」「カッコイイ」ような魚がとりたくなります。
水槽を用意して熱帯魚も飼いましたよ。でも、川を下って海の魚、にはいきませんでしたね。なぜだろ?
亀山は川ばかりで海がないから、なだけじゃないと思うけど・・・。
インタビュアー
大人になってからも魚が好き!は続くんですね。
峯さん
滋賀県側の淀川水系に行くと川が大きい!飛び込める!いい大人になってから野洲川で高いとこから飛び込んで肩がはずれたこともあります(笑)。
自然の中で「こわっ!」を体験したくなる。深いとこ探してしまう。濁流を見たくなる。大雨の時に濁流を見に行くじいちゃんの気持ちがわかる!
インタビュアー
(いや、じいちゃんはこわっ!を体験しに濁流を見に行くわけじゃないと思いますが~。)
でもどちらかというと亀山の川は浅瀬で透き通っていて静的なかんじがします。上流にダムってありますか?
峯さん
ないです。砂防ダムはあるけど水を堰き止めるダムはないし、亀山は小さな川がたくさん流れています。
インタビュアー
ダムがない小さな川の上流ならイワナやヤマメなどがいそうですが。水質も良いそうです
峯さん
そうですね。でもイワナやヤマメなどはあまりみかけない。
インタビュアー
そうですか。「魚と子どものネットワーク」も参加した亀山市内での水生生物調査によると、調査したどの川でも見られる魚はオイカワ、カワムツですね。小さな川は小さな魚たちの天国なんですね。オイカワ、カワムツが亀山の川の代表的な水生生物って言えるでしょうか?あと、ヨシノボリ類とかモクズガニとか。
峯さん
そうですね。水系によって顔つきが違うなどの特徴もあります。オイカワ一種でも遺伝子が違う。魚によっては川筋ごとに顔の感じが明らかに違うものもあります。 昔はその支流ごとに生粋の種が居ましたが今は養殖の個体と交雑して多様性がなくなりつつあります。人為的な撹乱つまり違う川筋や地域からの移動や、魚が棲む環境の変化によるものと言えます。
そういう意味で、魚は人の営みと深く関わっています。僕がよく遊んだ川でも、僕が子どもから大人になる間に何度か工事が行われているし、今の川はまず蛇行していません。まっすぐです。
インタビュアー
あ、そうか!川にコンクリートで段差が作ってあると、人為的であっても魚が川を上れるようにとか工夫してあるんだなー、魚もちょっと安心、なんて思って見ていたけど、そもそも川が極力真っ直ぐに流れるような工事は、魚に取っては大きな問題なんですね。
峯さん
人間にとっては水害を防ぐために必要なことなんですが。そのように川や池、田んぼの構造が変化すると、魚が産卵できなくなったり魚のエサになる貝が棲めなくなったりします。
それに、いい川、きれいな川、というのは清い澄んだ水の流れとは限らないんです。長い間魚は、人が使ったあとの水や濁りのある水にも棲んできました。水を溜めておく池もそうです。おいしいいいお米を作るにはいい田んぼ、いい田んぼにはいい水が必要です。いい水にするための一仕事が池干しです。 たいへんな労力で池干しをしたら、大きな鯉がとれて、その鯉でご馳走をつくりお祭りを楽しみます。
インタビュアー
あぁ、そうか。おいしいものや楽しい行事は、池干しのような、ちょっとしんどいけど暮らしに必要なことから生まれてきたことだったんですね。
峯さん
池干しが済んできれいになった水に二枚貝が棲む。二枚貝が棲めるような池の水はいいお米がとれるしタナゴのような魚もいる。人と魚の利害が一致しているんです。
インタビュアー
タナゴ!里山と川と人との関係性の話の中でよく出てきますよね、タナゴ。
峯さん
人と共生している魚です。ニッポンバラタナゴは、かつて分布域の河川やため池などで普通に見られたんですが、ペットとして移入したタイリクバラタナゴが広まったことで交雑がすすみ現在は絶滅の危機にあります。亀山にはヤリタナゴというのがいます。一か所だけ、川にはいませんが池にはいます。
インタビュアー
生物多様性が守られにくい状況にあるのですね。人の暮らしが自然から遠くなってしまっていることも一因でしょうか。
峯さん
今は暮らしの中に池干しのような行事もなくなってしまったし、僕らの子どものころ川は毎日遊びに行く身近さだったけど今はとても遠い存在になってしまいました。自分よりおっきい子に一緒に川へ連れて行ってもらうとかもない。今は「自然の中で遊ぶ」ということがとても難しい。
インタビュアー
はい。安全や安心と引き換えに人の暮らしの多様性は狭まっているかも。
ネットやテレビなどでよく使われる美しく流れる川・清らかな水、などのイメージはあふれていますけど。
峯さん
そういったハイライトを切り取った景色はもうええやん、そこまでの経過が大事やねん、て思います。
その1枚の写真を撮る瞬間までに、その撮った人が家を出てからどんな道を通って着いた川で、どんなことしてる中でどんな気持ちでその景色を1枚の写真に残そう!と思ったのか、その時間全部、してきたこと全部が大事。
インタビュアー
見た目に美しいことばかりでなく立体的に、五感で感じてほしいと。それで、今後の峯さんはどう動いていくのでしょう?
峯さん
僕にとって魚は「昔の友達」みたいなもんです。「幼なじみ」とか。
タナゴはきれいだしカッコイイんです。
ほんまもんはカッコイイ。
それを今の子どもたちに伝えたい。
自分たちが川や池へ迎えて伝えていくことでしか、川や水やそこに棲む魚たちの環境を知ってもらうことができないし、人間活動の変化による環境の変化を受け止めてもらえません。
インタビュアー
そのような気持ちで「魚と子どものネットワーク」や「里山公園みちくさ」での活動されているんですね。
峯さん
はい。
いま来てくれる子どもたちが大人になったとき思い出す「幼なじみ」に魚も入れときたい!て感じです(笑)!
インタビュアー
さて。じゃあ最後の質問ですが、これから川や森でどんなことをしたいですか?
川だと・・・?
生きものさがし、泳ぐ、水草、石さがし、バーベキュー、石投げ…
山や森だと・・・?
昼寝、虫や花探し、枝を探す、木に住む!家をつくる!…人工林でなくて里山で探そう。
最近使う機会があったチェンソーをもっと使って何かつくりたい!森は材料が豊富!いろいろ拾って秘密基地つくる!
インタビュアー
なんだかワクワクすることがたくさん出てきています!
峯さんは協議会パートナーとして協議会の川のイベントでもお話をしてくれています。
峯さんのしたいこと、協議会のみんなでシェアしたら面白そうですね!
最後まで読んでくださってありがとうございます。
あなたが川や森でしたいことはなんですか?
ぜひ教えてください。