鈴鹿川等源流域の森林

鈴鹿川等の源流域は亀山市にあります。亀山市は比較的温暖な本州の太平洋側三重県の北西部に位置します。伊勢湾に面する鈴鹿市や津市と鈴鹿山脈や布引山地とに囲まれた内陸にある市です。

 

鈴鹿川等源流の森林  新着情報

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■亀山市の面積

亀山市の総面積は約19,000ha(190㎢)です。そこに広がるのは北西部の山々、そこから流れ出す「川々」、その川が長年かけて作り出した段丘で、縦横無尽にアップダウンが入り組むユニークな地形となっています。約21,600世帯5万人が暮らしています。

亀山市の環境についてもっと詳しくはこちら

 

■亀山市の森林率

亀山市の面積の約63%(12,034ha)を占める森林は、主に鈴鹿川等の源流域にあたる市の北西部に位置しています。森林には水源涵養、災害や地球温暖化の防止、木材生産など多岐にわたる機能があり、そのような森林の機能が将来にわたり発揮されることを目指す必要があります。

森林のもつ大切な役割

山の針葉樹と川沿いの広葉樹が織りなす景観
■亀山市の森林における人工林率

亀山市には国有林もありますが、全森林面積のうち97%が民有林です。古くから林業が盛んでスギ・ヒノキなどの人工林面積は8,132ha、森林面積(民有林)全体の69%となっています。一方、現在亀山市の労働人口は23,000人ほどですが、そのうち林業就業者は約40人となっています。

人工林もまた手入れ次第で美しく豊かな森に

 

 

■亀山市の森林の樹種別面積・蓄積量

針葉樹は比較的加工しやすく、伐っては植える循環生産にも適したため盛んに利用されてきました。以前はスギの生産量が多かったようですが、現在ではスギとヒノキの割合はほぼ同じとなっています。金属やプラスチックなど他の素材にとって代わられ木材を利用することが少なくなり、木材価格が長く低迷したこともあって、今は販売するために伐るより間伐をして長期間かけ育てることが多くなっています。保全し価値を高めつつ、木材を使う仕組みを再生することが課題となっています。

木にも実に色々な色があります

スギ・ヒノキの人工林において今後、大径木まで育て上げ木材の価値を高めるか、経費を最小限にとどめ広葉樹の入り混じった天然生林へ誘導していくかの判断や処置も必要となってきています。

 

■人工林・天然林の割合と生育年数別面積割合

 亀山市の森林の人工林と天然林の生育年数をグラフ化すると、人工林天然林ともに11齢級以上(51年生以上)が約90%を占めています。亀山市の森林整備計画では、スギ・ヒノキ・マツなど人工林を伐る時期は35~40年とされており、人工林においては木を伐って使っていい時期がやってきていると言えます。一方で3齢級以下の森林はほぼ0%、10齢級(50年生)以下の森林を全て合わせても約10%に過ぎず、森林の少子高齢化が進んでいます。

災害防止の側面や生物多様性、素材生産性を考慮すれば、いろんな齢級の森林があり毎年一定量の木を伐っても大きく環境を変化させないで森林が保たれるよう、齢級の偏りを是正し平準化することが望ましいとされています。

また、天然林は放置していても良いかというとそうではりません。例えば、森林に落葉広葉樹が多いと多様な植物や動物が土に還り養分となって川や海の豊かさをもたらします。特に世話をしなくてもやはり天然林は土壌保全、災害防止等大きな役割・多面的な機能を持っています。そのような重要性から天然林においては、施業こそしないもののモニタリング(観察・分析)して管理することは大切です。

令和2年三重県森林簿

 

■森林所有者数と所有面積の割合

亀山市の森林はほぼ民有林で、森があればそこは必ず誰かの財産でもあると言えます。森林所有者のうち、所有面積が0.5ha未満の森林所有者が約50%、5ha未満の森林所有者では約95%を占めています。また、森林所有面積が5ha未満の森林所有者が森林面積の50%を占めています。

■森林所有者の市内在住割合

亀山市は、森林所有者の市内在住割合については比較的高いと言えます。それでも40%の所有者が市外に在住で森林管理が難しい状況となっています。

また、60%の市内在住森林所有者においても現在高齢化が進んでおり境界が確認できない森林や分からない森林、相続手続きが済んでいず権利の所在不明な森林が増えているなど、管理が難しい状況となっています。

地形図を持って杭を手掛かりに山主さんの気持ちになって境界を探す森林組合の職員

 

実際のところ森林も、農業のように手間とお金をかけて育てます。知識や技術も必要です。そのうえ長い年月がかかります。

しかし上記のように、小さな面積の森林所有者の方も多く単独で管理するのは難しい状況にあります。エネルギーや生活用品などの原材料が金属やプラスチックに切り替わり、また外国産木材の輸入が重なり国内で育った木材の出番が減って以来林業は長く低迷しています。森林には木材生産以外にも多くの公益的な機能がある中で、森林所有者だけが森林の維持管理を負うことは年々難しくなっています。

 

 持続可能な多面的・公益的機能の発揮、木材生産や利用の仕組みづくりなどを地域全体で支える必要があります。それにはまず、ここに並べたグラフの資料が果たして正しいか?を含め森林状況の正確な把握から始まり、検討や方向づけが必要です。

 

 

 

 

■森林づくりにおける亀山市の取り組み■

三重県および亀山市では、経済活動を行う人工林を「生産林」、天然林とゆくゆくは天然林に移行していく人工林とをあわせて「環境林」と大きく2つに分けています。これら生産林と環境林に対して国・県・市からの補助をもとに、主に3つの事業が取り組まれています。

1.林業振興のための取り組み

2.森林の公益的機能を支える取り組み

3.森林や木材を愛する心を醸成する取り組み

亀山の森林づくり計画(平成31年3月)より

特に、平成31年度に始まった「森林経営管理制度」という国の制度により、1.や2.にあたる地球温暖化対策や林業振興のための人工林管理が今後着々と進められていく予定です。国は、令和4年度から納税義務のある国民から1人あたり年額1,000円の「森林環境税」を徴収します。そこから「森林環境譲与税」として亀山市に再配分されます。その財源をもとに、森林所有者の森林管理に関する意向を調査したり、境界の明確化や林分調査を通じて育林や伐採の方向性を決めたり、場合によっては整備をしたりします。

 また、三重県でも「みえ森と緑の県民税」として県民1人あたり年額1,000円が課されており、それは「災害に強い森づくり」と「県民全体で森林を支える社会づくり」という2つの基本方針にもとづいて亀山市に再配分されています。地域によって特色ある使われ方をする県民税ですが、亀山市では主に2.や3.にあたる木材の活用や森林への理解を広めることに活用されています。

 

□林業振興のための取り組み

・林業生産活動の支援

林業の振興に向けて事業体の支援をします。

・林道の維持管理

 林道は、森林の現場を行き来し木材を搬出するために欠かせない林業の大動脈と言えます。一部生活道路としても利用されています。豪雨や強風、台風などで道が崩れたり橋が壊れたりするため、修繕や維持管理が欠かせません。亀山市では国や県と一緒に東海自然歩道の管理も行っています。

林道から東海自然歩道に入り2時間かけて巡視する市職員
□森林の公益的機能を支える取り組み

・森林環境創造事業

暗く混んだ人工林で木を伐ることにより、光を受ける面積や風が通り抜ける空間を増やすことで成長を促し地球温暖化防止や土砂災害防止などの効果が期待できます。また、地表の湿度を保つ下草を生やし落葉広葉樹が芽を出し育つ空間をつくるなどして物質循環が豊かになり生物多様性が豊かになるなどの環境が整えられます。

□森林や木材を愛する心を醸成する取り組み

・みえ森と緑の県民税による取り組み

子どもたちが木や森に触れる機会となり、子どもたちを通じて保護者の方々にも地域の木を使った暮らしを提案する機会となっています。

 

市内の木材・製材業を営むみなさんと共同で木遣いを広めますおじさんたちも山の恵みの専門家です

 

■源流協議会の活動はみえ森と緑の県民税や市税などからも支援をうけています

源流協議会は市民の皆さんとともに地元の団体、企業、教育機関をつなぎ、林業だけでなく農業や商業、観光をふくめ地域活動全体に寄与することが期待されています。