鈴鹿川等源流域の環境

 地形や地質、気候はその地域らしい衣・食・住や産業をうみ人の暮らしぶりを方向付けます。川上から川下へかけて土地の利用の仕方や働き方は様々でした。

※以下の記述において、出典が付された記事以外の基礎的な情報については『亀山市史』よりまとめています。より詳しい内容や科学的な根拠となる出典や論文は亀山市史を参照ください。

亀山市史ウェブサイト
http://kameyamarekihaku.jp/sisi/SizenHP/geo/geotop.htm

  

1.亀山市の地形・地質

1-1 地形

地理院地図に山地部分を示すために矢印を加筆

地理院地図:国土地理院 

亀山市の西端に位置する油日岳、那須ヶ原山から北東へ高畑山、三子山、仙ヶ岳、野登山へと、急峻な地形の山岳地帯が鈴鹿山脈南端の稜線を形成しています。

➡1,000mに満たない山々ながら、その起伏に富んだトライアルな地形や自然の美しさは登山や数日掛けた縦走・トレイルランニングなどをするために市内外から訪れる愛好家に親しまれています。

山岳地帯の東側に錫杖ヶ岳、筆捨山、羽黒山明星ヶ岳、雨引山といった低山が山麓地帯を形成しています。一帯を構成する花崗岩類が深く浸食を受け急峻なV字谷の地形をつくっています。また、加太地区には標高300500m前後の山々が連なっています。

➡このような中低山の尾根と谷の繰り返しによって、石水渓や白糸の滝、不動滝を始めとして数々の景勝地が見られ、訪れる人は東海自然歩道をはじめとするレジャールートを楽しむことができます。また加太地域は地の利が活かされ古くから林業が盛んでした。

■関町・白木町・亀山周辺は山麓から東に続く丘陵地帯となっており、人の暮らす里地と山や森林の恵みを採集する里山とが風景を織りなします。

➡山菜やキノコは食材として、また木々は薪や炭などのためエネルギーとなり、枝葉は田畑の肥料となるなど山や森林は資源でした。そのような資源を生む里山が宿場町や城下町の人やにぎわいを支えました。また、里地では商品作物として養蚕や茶の栽培など畑作がさかんに行われました。

ガスや電気を使うまではシバを燃料にしていた
シバはツシと呼ばれる屋根裏にあげて保存しました

 

■丘陵地の間を流れる鈴鹿川、安楽川、中ノ川の周辺に開けた低地帯では稲作が行われ、麦や菜種油との二毛作も行われていました。また、開国後の明治期には製糸業も盛んでした。そのため桑畑が広がる地域もありました。農業や産業が盛んになる契機には、実は、古くはお殿様、時代が変われば県や市の技術指導や試験場のバックアップが盛んにありました。

1-2  地質

20万分の1シームレス地質図:産業技術総合研究所 地質調査総合センター に亀山市の境界を記入

20万分の1シームレス地質図:産業技術総合研究所 地質調査総合センター 
https://gbank.gsj.jp/seamless/2d3d/?center=34.8994,136.4399&z=12

■山岳地帯を構成する岩石は、古生代ベルム紀の地層と中生代白亜紀の花崗岩類で、もろくて崩れやすいため深く浸食をうけやすいのが特徴です。

■鈴鹿山脈東側の急傾斜地には一志断層が南北に延びそれらを境に、新生代の地層が形成する山麓、丘陵、台地および沖積低地が広がっています。2600~700万年前にできた鈴鹿層群と言われる泥岩・砂岩・礫岩などで構成する地質、さらに東側に700~200万年前にできた東海層群と言われる粘土・シルト・砂・礫などで構成する地質が地形をなしています。

『森林生態学』よりp57地球史年表(堀田1989に基づく)

亀山市史:自然編「地形」
http://kameyamarekihaku.jp/sisi/SizenHP/geo/geo02/geo02.htm

 

 

1- 3

水系・水

地理院地図に川の流れる方向に矢印を加筆

地理院地図:国土地理院 
https://maps.gsi.go.jp/#7/34.547287/136.812744/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1j0h0k0l0u0t0z0r0s0m0f1

■亀山市と滋賀県甲賀市との県境に位置する高畑山に水源をもつ鈴鹿川は、亀山市内を西から東へ貫流しています。全長38㎞、流域面積323㎢と県内髄一の規模で、中津川、加太川、小野川、亀山市東部の椋川、安楽川などの支流が次々合流し鈴鹿市を経て四日市市で伊勢湾に流入しています。一方、中ノ川は関町萩原地域を水源として津市芸濃町から亀山市南部を流下し鈴鹿市を経て伊勢湾へと注いでいます。

河川以外にも地下を流れる伏流水が存在します。沖積低地の段丘や扇状地の堆積物中に分布して現河川水面とほぼ同じ高さに分布している浅層地下水と、東海層群の砂層・砂礫層に分布する深層地下水(被圧地下水)との大きく2つに分けられています。いずれの層にも取水井が設置されて亀山市民の飲料水や農水、工業用水として利用されています。

鈴鹿川の源流をたどる

亀山市史:自然編「亀山市の地下水」より

亀山市史:自然編「亀山市の地下水」
http://kameyamarekihaku.jp/sisi/SizenHP/geo/geo17/geo17.htm

1-4

河岸段丘

亀山市史自然編「亀山市の活断層と地震・自然災害より

亀山市史自然編「亀山市の活断層と地震・自然災害
http://kameyamarekihaku.jp/sisi/SizenHP/geo/geo16/geo16-2.htm

亀山市の地形においてきわめてユニークなのは河岸段丘がなす地形のデコボコです。
自動車で道路を走っていると坂のアップダウンや短い橋の下の深い渓谷に遭遇します。
デコボコの合間に宅地や茶畑や川や山が出てきて風景が目まぐるしく変わります。
この地形を活用してタウンウォーク、ウォークラリー、トレイルランニングなどをしたらおもしろそうです。

1-2地質にあるように、山麓地帯では鈴鹿層群、丘陵地帯では東海層群が地形をつくっています。その丘陵地形は主要河川に大きく分断されて地形が東西方向に長軸を持つ地形を成しています。
東海層群は河川の浸食に対する抵抗が弱いため、亀山市に広がる丘陵地は開析が著しく進み、樹枝状開析谷(まるで枝を広げる木のようないくつもの谷筋)が発達しています。
谷と谷の間の台地は粗粒な礫、砂、泥層からなり半固結状態であるため、水が流れ続ける河川が、河床面を埋め立て段丘ができます。
亀山市の段丘はすべてこのような旧河床面を埋め立てた河成段丘であると言われています。

 

 

2.亀山市の気候

2-1. 年間の月別気温・降水量

気象庁 亀山市月別平均気温・降水量2019よりグラフ化

気象庁 亀山市月別平均気温・降水量2019
http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/view/monthly_a1.php?prec_no=53&block_no=0503&year=2019&month=&day=&view=

亀山市は、年平均気温が約15°C、年間降水量が2,000㎜ほどの比較的温暖で湿潤な太平洋側の気候です。

平野部では、夏場は梅雨や台風の影響で降水量が多く、冬場は自動車のタイヤをスタッドレスに替えるか替えないか悩む雪の量です。そのような「暖温帯」に属す平野部に比べて、標高1,000m前後の鈴鹿山脈エリアは積雪量が多く寒冷な「冷温帯」となっています。

平野部から山間までほんの15~20㎞程の間で、降水量もずいぶん異なります。

鈴鹿川系河川整備基本方針:国土交通省
https://www.mlit.go.jp/river/basic_info/jigyo_keikaku/gaiyou/seibi/pdf/suzukagawa55-5-1.pdf

2-2. 亀山の年間降水量・気温・風速・日照時間の変化
  (1979-2019)

亀山観測所 年ごとの値 主な要素:気象庁 より散布図化
http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/view/annually_a.php?prec_no=53&block_no=0503&year=&month=&day=&view=

⑴ 40年間の年平均降水量をグラフ化しました。

 

亀山市の年間降水量は増加の傾向にあります。

 

⑵ 40年間の年平均気温をグラフ化しました。亀山市の年平均気温は40年間で約1℃上昇しています。
IPCCの第5次報告では、地球規模の気温の上昇は32年間(1880-2012)で0.85℃とあるのでほぼ同じような推移であると考えられます。

JCCCA 全国地球温暖化防止活動推進センター
https://www.jccca.org/ipcc/ar5/wg1.html

⑶ 40年間の年平均風速をグラフ化しました。亀山市の年平均風速は、1980年代半ばまでの秒速1.8m以下から約秒速2.5mへと強まっています。
また、冬場にはこの地特有の“鈴鹿おろし”とよばれる季節風の影響を大きく受けます。鈴鹿山脈の南部にあたる亀山は特にその影響を受けやすく、山地に積雪をもたらし平野部には強い空っ風が吹きわたります。年間30~40回を記録し、とくに午前中が多いそうです。

鈴鹿おろしに関する最近の傾向をさらに詳しく知りたい方は以下をご覧ください

◆地球温暖化に伴う冬型気圧配置と伊勢湾岸地域の局地風の変容について 大 和 田 道 雄 (おおわ だ みちお)愛知 教 育大学 特 別教授
https://kamemorikyo.jp/wp1/wp-content/uploads/2020/08/eed731b89e783bb639fb74bf04f4f3e0.pdf

亀山市は4・5月と11月がもっとも日照時間が長く、5月に限っては、早春にスポーツ選手がよくキャンプインしマンゴーの産地となるくらい日当たり良く温暖な宮崎県より亀山市の日照時間は長いです。
けれど、40年間を比較してみると年間を通じた日照時間は減っています。