自然とは「自ずから然り」で人間がいなければあるがままですが、人間の活動によって大きな影響をうけます。そのため生物多様性と一口に言っても、その理解や対応について真剣に考えると難しいと言えます。
減っている動植物をこれ以上失わず、増えている動植物とどう共生するかは、まず相手とその動植物の暮らす環境を知る必要があるのではないでしょうか。地球温暖化や気候変動、森林や河川を含む自然環境とともなわせて身近なところから考えるため、源流域や亀山によくいる身近な生物、自然環境の指標となる生物をご紹介していきます。
-陸上動物-
人の暮らすエリアでイヌやネコ以外の動物との遭遇する機会が増えただけでなく、最近は「獣害」と言われ畑や田んぼ森林における農業や林業に大きな被害をもたらしています。ひとと動物がどう共生していくか模索が続きます。
ニホンジカ
学 名 Cervus nippon (TEMMINCK)
分 類 哺乳綱偶蹄目 シカ科 シカ属
鈴鹿山脈においては以前山頂付近にカモシカ、山麓にシカとある程度棲み分けが見られたが、今ではシカは山頂でも田畑でも人家際でも見られる。林業においては植林すると穂先の食害に遭い、成林でも樹皮剥ぎをされることで材木としての価値を失う大きな被害となっている。
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三重県立博物館ウェブサイト
https://www.bunka.pref.mie.lg.jp/MieMu/82991046678.htm
ニホンカモシカ
学 名 Capricornis crispus
分 類 ほ乳綱 偶蹄目 ウシ科 カモシカ属
肉や毛皮目当てに多数捕獲され一時全国で3000頭まで減少→昭和30(1955)年に「特別天然記念物」に指定 生息数回復 →現在全国で10万頭が生息 →増加による農林産物への食害が問題になっている。
全国に13か所の「保護地域」のうち三重県内では「鈴鹿山地」と「紀伊山地」の2か所が設定されている。昭和39(1964)年に「三重県民獣」に制定されている。
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三重県立博物館ウェブサイト https://www.bunka.pref.mie.lg.jp/MieMu/82858046545.htm
アライグマ
学 名 Procyon lotor
分 類 ほ乳網 ネコ目 アライグマ科
北米原産で本来森林や草原地帯に生息する種だが現在は亀山市内の人家や畑付近にも生息する。しぐさが愛らしく人気のある動物だがその被害の多さから特定外来生物に指定されペットとしての飼育は法律で禁止されている。駆除の対象となる有害な捕獲対象鳥獣にも指定されている。
ヌートリア
学 名 Myocastor coypus
分 類 ほ乳網 ネズミ目 ヤマアラシ亜科 ヌートリア科
ヌートリア属
南米原産でもともとは飼育目的で輸入したがのちに野生化した。川べりに横穴を掘って巣をつくり、基本的には夜行性なので明け方や夕暮れ時にエサを探しに出かける。草食動物で、主に水辺の農作物や地下茎などを好んで食べるため稲や根菜、葉物など農作物が被害を受けやすく、げっ歯類で噛む力が強いためケーブルが断線される被害などもある。
アライグマとならび外来生物のうち「特定外来生物被害防止法」で指定された「特定外来生物」に指定されている。在来の動植物を補食したり、生態系に害を及ぼしたりする可能性がある有害鳥獣として駆除が可能な対象となっている。
ハクビシン
学 名 Paguma larvata
分 類 ほ乳網 ネコ目 ジャコウネコ科
アライグマやヌートリアと並び、有害鳥獣として捕獲対象としている都道府県もあるが三重県や亀山市では対象外となっている。
ニホンザル
学 名 Macasa fuscata
分 類 サル目 オナガザル科
学習能力・運動能力が高く群れで行動するので、人家周辺でも適応しやすく一度に大量の被害をもたらす。ぜいたくな食べ散らかし方は作物を栽培しているひとにとって意欲の減退など精神的なダメージも大きい。一人一人より集落での対策が有効で、最近では各地域において取り組み策の様々な支援がある。
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三重県立博物館ウェブサイト
https://www.bunka.pref.mie.lg.jp/MieMu/82990046677.htm
二ホンイノシシ
学 名 Sus scrofa leucomystax
分 類 偶蹄目 イノシシ科
ドングリやキノコ植物の新芽などを好み、ミミズやイモなどの根菜などは鼻で掘りおこして食べる。防除のために電柵等を張っても穴を掘って畑に侵入することもある。
食料となる作物を放置せず、隠れ場所をなくし、見通しをよくするなど寄せ付けないなどの対策をするが、駆除の対象にもなっている。
-鳥-
開発、温暖化による食物網のズレ、林種の偏った森林構成、あと国際関係によっても鳥の生態に影響があり、全体的に鳥類は減っている傾向にあるそうです。
亀山市内では山地のみならず、山すそや川すその里地で姿が見えずとも青空の下鳥のさえずりが聞えてくることがよくあります。そのような代表的な鳥が、ウグイス、キセキレイなどです。
※主に鳴き声の判別など鳥に関する情報は三重県環境情報学習センターのご協力を得ました。
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環境省ウェブサイト
http://www.biodic.go.jp/birdRinging/atlas/Cettia_diphone/Cettia_diphone_wamei.html
源流域で採取した鳴き声はこちら
ウグイス
学 名 Cettia diphone cantans
分 類 スズメ目 ウグイス科ウグイス属
人家近くの藪で鳴き声を聞くことが多いが姿を見せることはあまりない。渡りをするわけでもないが移動できる距離は長い。
「ホーホケキョ」と模される鳴き声は縄張りの主張や求愛のためのオスのみがする鳴き方、「谷渡り」と呼ばれる鳴き方は警戒声、チャチャと茂みの中での鳴き方は「地鳴き」というように3種の鳴き方がある。
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東京都公園協会ウェブサイト
http://www.tokyo-park.or.jp/nature/hachijo/creature/detail/0389.html
源流域で採取した鳴き声はこちら
キセキレイ
学 名 Matacilla cinerea robusta
分 類 スズメ目 セキレイ科セキレイ属
季節によって移動することがない留鳥で河川上流の渓流に棲む。高山の湖沼でも暮らすが平地暖地で越冬する。虫が主食。チチチチッという声で鳴く。
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三重県立博物館ウェブサイト
https://www.bunka.pref.mie.lg.jp/MieMu/82990046677.htm
ミソサザイ
学 名 Troglodytes troglody
分 類 スズメ目ミソサザイ科ミソサザイ属
鳥のなかでも特に小さい種で色も地味だからか鳴き声がとても大きく長いのが特徴となっている。主に森林を流れる渓流に棲み倒木にいる虫などを食べている。
カワガラス
学 名 Brown dipper
分 類 スズメ目カワガラス科カワガラス属
名前には「カラス」がついているがカラス類ではない。潜水が得意で水際ぎりぎりを直線的に飛んだりする。
ヤマセミ
学 名 Crested Kingfisher
分 類 ブッポウソウ目 カワセミ科 ヤマセミ属
ハトほどの大きさで、羽を広げると真っ白な胸の左右に白黒のストライプが美しい。カワセミと同じようにするどく川に飛び込んで魚を取って食べる。
-水生生物-
鈴鹿山脈や布引山地を水源とする約35の河川が流れており、そこに棲む水生生物について
2019年度亀山市の委託をうけ「亀山の自然環境を愛する会」「水辺づくりの会 鈴鹿川のうお座」「魚と子どものネットワーク」の3団体が調査しました。
詳しい調査結果はこちら
<2019年度 亀山市2019年度亀山市内5河川における水生生物調査報告書(本編)>
<2019年度 亀山市2019年度亀山市内5河川における水生生物調査報告書(資料)>
<水生生物調査 調査地点図と調査結果>
そちらの資料より、亀山市の代表的な水生生物をご紹介します。
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亀山市ウェブサイト
2019年度亀山市内5河川における水生生物調査報告書
https://www.city.kameyama.mie.jp/docs/2020051300063/file_contents/honpen.pdf
オイカワ
学 名 Zacco platypus
分 類 コイ目 コイ科
カワムツとともに、市内5川のどの調査地点で見られたとのことで代表的な魚と言える。
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亀山市ウェブサイト
2019年度亀山市内5河川における水生生物調査報告書
https://www.city.kameyama.mie.jp/docs/2020051300063/file_contents/honpen.pdf
カワムツ
学 名 Candiadia temminckii
分 類 コイ目コイ科
市内5河川の各調査地点において多数捕獲できるオイカワとカワムツであるが、オイカワは上流、カワムツが下流と一定の棲み分けが見られる。
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亀山市ウェブサイト
2019年度亀山市内5河川における水生生物調査報告書
https://www.city.kameyama.mie.jp/docs/2020051300063/file_contents/honpen.pdf
ヨシノボリ
学 名 Rhinogobius fluviatilis
分 類 スズキ目ハゼ科ヨシノボリ属
鈴鹿川や椋川ではどの調査地点でも多数捕獲されている。
大阪府立大学ハーモニー博物館ウェブサイト
http://www.museum.osakafu-u.ac.jp/html/jp/natural/detail.php?scene=3&id=474
モクズガニ
学 名 Eriocheir japonica
分 類 イワガニ科
成体は川に生息し幼生は海でないと育たないため、秋には繁殖活動のために川上から海へ移動する。調査では、そのモクズガニが調査したすべての河川から見つかり、改めて海とのつながりを強く実感したとの報告があった。
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亀山市ウェブサイト
2019年度亀山市内5河川における水生生物調査報告書
https://www.city.kameyama.mie.jp/docs/2020051300063/file_contents/honpen.pdf
ギギ
学 名 Pseudobagrus nudiceps
分 類 コイ目 ギギ科
九州・四国地方の一部、三重県以外の近畿地方が本来の在来分布であったが三重県に移入した。
伊勢湾の周囲だけに生息するネコギギとは髭の本数や臀鰭の数で見分ける。国内外来種として生息域や生態が似るネコギギの生息をおびやかさないか危惧される。
国立環境研究所ウェブサイト
https://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/DB/detail/50790.html
画像:三重県教育委員会事務局 社会教育・文化財保護課ウェブサイト
https://www.bunka.pref.mie.lg.jp/bunkazai/da/daItemDetail?mngnum=730315〉
写真提供:志摩マリンランド
ネコギギ
学 名 Pseudobagrus ichikawai
分 類 ナマズ目ギギ科
ネコギギは世界で伊勢湾と三河湾に注ぐ川にしか分布していない。日本産淡水魚の中でもかなり古いものの一つであり、遺伝固有種であるとされている。しかし最近は集中豪雨による河床の平坦化などで分布域が減少している。環境省の絶滅危惧IB類、三重県指定希少野生動植物種に指定されている。
三重県ウェブサイト
https://www.pref.mie.lg.jp/suigi/hp/16209017523.htm
–昆虫-
準備中
–植物-
準備中
–キノコ-
準備中
Topics
植物のカマツカと動物のカマツカ
魚のカマツカは、なぜそのような名前になったかというと、煮ると鎌のツカのように固くなり見た目もそれに似ているからだそうです。
植物のカマツカは、材が固く実際鎌の柄に使われたから、だそうです。
日々の生業でよく使われる道具の持つ性質から身近な動植物の名前がつくんですね。